この度、日本透析医会第 4 代会長に選任頂きました。課せられた責任の重さに改めて身の引き締まる思いです。

日本透析医会は都道府県透析医会連合会を母体に昭和 60 年に現在の名称に改称し、30 年近い歴史をもつ全国の透析医のみで構成される職能団体です。この間稲生綱政初代会長の下、昭和 62 年に社団法人となり、そして平成 24 年、第 3 代山﨑親雄会長の下、公益社団法人へと移行し、順調な発展を遂げて来ました。本会の使命は適正な人工透析療法を普及し、技術、安全性、有効性の向上を図り、関係者の教育研修を行うとともに、腎不全対策の推進並びに災害時における透析医療の確保に資する事業を行い、もって国民の保健・福祉の向上に寄与することにあります。

この目標を達成するため、稲生綱政、平澤由平、山﨑親雄の歴代の会長の指導下に、以下の事業を三本の柱とする公益性の高い事業が展開されて来ました。

  1. 人工透析療法に関する調査・研究、普及、教育研修事業
  2. 人工透析療法に関する研究助成事業
  3. 人工透析療法に関する安全対策事業

そしてそうした成果として、我が国の透析患者の生命予後は先進諸国中最良であり、必要とする国民に普く透析医療が提供される世界でも羨まれる水準の透析医療が達成されました。しかしながら、世界で最良の生命予後を示す透析患者の平均余命は一般人口の半分に満たず、多くの合併症から患者の健康関連 QOL は低下し、社会復帰や社会参加は阻害され続けています。透析患者の高齢化が進み、糖尿病や腎硬化症など高度の疾患を合併する透析患者が増加する一方で、腎移植医療の停滞から若い、活動的な患者も存在し、患者各人により適切な個別化した透析医療の提供も求められています。

他方、透析現場では新たに透析医療に取り組む若い医師や透析医療の真の担い手であるメディカルスタッフが不足し、透析医療機関の閉鎖から透析医療が危機的状況に陥っている地域も一部に見られます。また、医療費の増大から透析医療を含む多くの分野で治療コストの切り下げや合理化が求められ、そうした状況下で如何に良質な透析医療を必要とする患者に公平に提供し続けることができるのか、も職能団体である日本透析医会に解決が求められている課題です。

慢性腎臓病は高齢者に多い病気であり、医学の発展や人口の減少によっても透析医療のニーズは継続します。必要とする患者に、良質な透析医療を等しく提供し、患者の予後向上に貢献するという国民から託された課題に日本透析医会が的確に対応できるよう、皆様のご指導、ご支援、ご協力を心からお願い申し上げます。

公益社団法人 日本透析医会 会長
秋澤 忠男